ももクロのミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」を観てあれこれ考えた

(この記事はももクロのミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」を観た人が読むことを前提に書いています。ネタバレや省略を多く含みますのでご承知おきください)
 

ももいろクローバーZ初のミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」たいへん良かったです。もう見どころ聴きどころ満載。玉井詩織さんのウェディングドレス!(カナコが言う「ぜんぜん似合ってない」というセリフに説得力が皆無な、パーフェクトビューティーな花嫁姿!) メガネな看護師れにちゃんの地味かわいさ(たしかにももクロやってなかったら看護師は選択肢としてありえそう)。あーりんのアドリブ番長ぶり!(いい意味で役と本人にいちばんギャップがなかった) 宙吊りになる夏菜子!(「ねぇ、名前なんだっけ?」というソロから始まる一連のシーン、たまらなく美しい。パンフレットに記載がないということは、あれも新曲「天国のでたらめ」の一部なのかしら) それに客演していただいた、シルビア・グラブさん、妃海風さんのすばらしさ。アンサンブルとともに、ももクロの楽曲に新たな彩りを与えてくれました。「サラバ、愛しき悲しみたちよ」もよかったけど、とにかく「HAPPY Re:BIRTHDAY」が圧巻でした。そしてミュージカルならではの楽しさとしてはやはり四人と堕天使たちが歌い踊って「対決」する「黒い週末」! 自分は合計6公演観ましたが、大満足でした。


……と、こういう断片的な感想ならtwitterで書けばいいわけですが、いろいろ書き留めておきたい「発見」が個人的にいくつかあったので、こうしてブログとして書いておきます。

 

百田夏菜子の演技プラン

百田夏菜子が演じる主役の千田カナコ、回を重ねるごとにどんどんアホになってましたね。もちろん役柄そのものが「バカな子」役ではあるんですが、冒頭の渋谷のシーンなんか、始まった直後の回ではふつうにしゃべっていたのが、後半になればなるほど動きも変ならセリフ回しもどんどん誇張されていって、三人が笑いをこらえたりこらえきれなかったりしていました。


ただ、これは夏菜子が明確に意図をもって演じていたことだと思う。この作品自体が「突き抜けたバカが世界を変える」話なので、そこを自分の演技でも最初から補強しておきたかったんだろうな。カナコがとびきりのバカであることは物語の根幹となる重要なファクターで、劇中これでもかとおバカぶりが発揮されます。その結果、筋立てや設定に少々の強引なところがあっても「カナコ、バカだから」であっさり納得させられてしまう(百田夏菜子本人を知るももクロのファンであればなおさら)。キャラクターをめちゃくちゃ便利に活用しているなぁと感心しました。


そして2回目か3回目の鑑賞で気づいたのは、第2幕でアイドルグループ「ヘヴン」としてライブするときも、彼女は百田夏菜子ではなく千田カナコを貫き通していたこと。途中途中、かりそめの世界で願いどおり踊っていられる現状を噛みしめるような顔で周囲を見まわしたり、隠している苦しみが表に出てきたりと、ふだんのももクロのライブ時とは異なる表情を何度も見ることができました。これを確認できただけでも、複数回はいってよかったし、ペンライトを振らずにじっと観劇していた甲斐があったと、個人的には思う。


あとは「笑顔の演技」が印象的でしたね。劇中では七割がた笑っているカナコですが、その笑顔も「根拠はないけど自信だけはある笑顔」「純粋に楽しさの発露としての笑顔」「不安やつらさを内包する笑顔」等々さまざま。別れの場面での「さよならは言わないー!」なんてセリフも、バカっぽく満面の笑みで言うからいっそう胸に迫りました。そんな多彩な笑顔の集大成として用意されたのが、最後の最後、三人に駆け寄る直前に見せる穏やかな微笑で、あれが観客に、この物語が(具体的には語られないけれど)ハッピーエンドを迎えるであろうことを確信させ、後味よく終わらせてくれました。


●アイドルグループ「ヘヴン」の色分け

「ヘヴン」のライブシーンで客席にペンライトを振らせる演出、(個人的には前述のように振らなかったけど)アリはアリだったなと。ただ、途中でふと「ヘヴンの色分けってどうなっているのだろう、そもそもメンバーカラーは存在するのか?」という点が気になりました。

 

劇中では4回(上着を羽織るだけのものも含めて)衣裳が変わるヘヴンですが、衣裳は毎回もれなく多色づかいで、スカートの下のパニエも虹の七色に染められた全員共通のものでした(中央にくる色をずらして差を出していたけど)。そこでパニエの真ん中にくる色、四人全員がももクロでのカラーとは違っていたんですよね(カナコ=青、しおり=紫、あやか=オレンジ、れに=黄)。

 

いちおう、3回目に着る衣裳は各自「ももクロでのイメージカラー」がそれとなく前面に集中するデザインになっていましたが、そうだと断言できるほどにはハッキリ主張していない。さらに「走れ!」でヘヴンが振るペンライトの色は全員「白」。だからカナコ=赤/しおり=黄/あやか=ピンク/れに=紫じゃない可能性、そもそもヘヴンというグループには色分けという概念がない可能性が頭に浮かびました。

 

まぁ、これは実在のももクロと響きあう、アテ書き作品ゆえの雑念ではあるんですが、決して無視はできないのが悩みどころ。仮にヘヴンひとりひとりにメンバーカラーを設定したうえで、「青」や「緑」担当のメンバーが脱退していくところを見せられたら、さすがに心穏やかではいられない人続出だったでしょうから、色分けに関しては現状ぐらいのふわっとした設定で「それが正解!」だったとは思います。

 

●「赤い」ヘッドホン

 イメージカラーの話をもう少しすると、冒頭の渋谷のシーン、初めて登場する高校生だったカナコ、シオリ、アヤカ、レニ四人の服装は、ももクロ色をほぼ完全に排したものでした。ただ、唯一違っているものがあって、それがカナコのつけていた「赤い」ヘッドホン。何度も観て、これって実はとてつもなく重要なアイテムだったんだと気づきました。

 

事故に見舞われる直前、交差点でダンスを踊りだす四人ですが、このときカナコだけがヘッドホンを装着します。つまり、ほかの三人の耳には音楽は聞こえておらず、カナコの動きに合わせて踊っているだけなわけです。観客とカナコだけが曲を共有している状況。そこに突如、暴走した自動車がつっこんできます。

 

カナコにしてみれば、五感のうち聴覚を「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」が占めている状態でいきなり命を絶たれたわけで、この楽曲に対する執着がきわめて強いのも当然でしょう。生前最後に聴いた歌なんだもの。

 

さらにいえば、カナコが自分が死んだことに気づかないまま天国に来たのも、聴覚を封じられていたせいもあったのでしょう(堕天使が再現した事故の衝突音にカナコは身をすくめますが、あれは「初めて聞いた音」に対する反応なわけです)。「バカで鈍感だったから」だけではない理由が、ちゃんと伏線として置かれていたのだと。

 

だからもし、カナコがあそこでヘッドホンをつけず、アカペラで歌いながらみんなと踊っていたのだったら、素直に「死」を認識して生まれ変わり、そもそもこの物語は生まれなかったんじゃないかと。紙一重だったその重要性を際立たせるために、あえて冒頭の場面では「赤い」ヘッドホンを身につけさせたのだと考えています。

 

……つらつら書いてきましたが、ほかにも改めて気づかされる点がまだまだありそうですし、収録した映像がソフト化されることを心から願っています。

 


絶賛上演中!「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」公演ダイジェストmovie